すべてがFになる
(パロでいこう)


●さすが博士(p.11)

「お名前は何というの?」
「西之園です」彼女は答える。「初めまして。あの、私は……」
「いえ、姓は知っています。お名前は?」
「萌絵です」
「モエさん? どんな字を書くの?」

「キャラに"萌える"の、萌という字に、YU-NOに出てくる絵里子先生の、絵です」
「そう、"萌絵"さんね」

 その光景をモニターの前で見ながら、話しをする二人の男がいた。
「……山根さん、解りましたか?」
「いや……。しかし、さすがだな、博士は」

●肺の不思議(p.23)

 犀川は煙草を吸いながらコーラを飲むことにした。不思議なもので、同じ口から入るのに、両者は自然に分別されるようだ。

「ゲホゲホっ」
 ……分別されなかったらしい。

●見つめ合い(p.23)

 ドアがノックされたので、返事をする。
「失礼しまーす」西之園萌絵が入ってきた。

 いつものことだが、目立つ服装だった。
 鮮やかなピンクのタンクトップに薄いグレーのジーンズ。白い薄手のベストを着ている。黄色の大きなショルダーバッグを提げていた。髪は短くストレートで、シャツと同じピンク色のイヤリングを片方にしていた。よく見ると、イヤリングはガラス製で象の形をしている。

「そんなに見つめちゃいやですぅ」
「…………」

 人は自分の中にいくつもの人格を持っている。萌絵も例外ではないのだろう。

●違和感(p.23)

 ドアがノックされたので、返事をする。
「失礼しまーす」西之園萌絵が入ってきた。

 いつものことだが、目立つ服装だった。
 鮮やかなピンクのネクタイに薄いグレーの短パン。白い薄手のチョッキを着ている。手にはウクレレ、首にはお花の首飾りを下げていた。

「それは私ではありません」

 仰せの通り。

●大人の味(p.24)

 彼女は、犀川同様ブラックコーヒーが好きだったが、少なくとも西之園家で萌絵がコーヒーを飲んでいるところは見たことがなかった。大学生になって、大人の味を覚えたのであろう。

(いつか、もっと凄い大人の味を教えてあげよう)
「あら、先生、何かおっしゃいましたか?」
「いや、何でもないよ」
 犀川はそう言うとニッコリと微笑んだ。

●これも大人の味(p.25)

「ちゃんと、もう、ふたり分、いれました」萌絵はそう言うと、満足そうににっこりと笑った。
 犀川は、萌絵の愛らしい口元を見て、多少機嫌が良くなった。

(あの口に僕のモノをいれられたら、もっと機嫌は良くなるのだけど……)
「あら、先生、何かおっしゃいましたか?」
「いや、何でもないよ」
 犀川はそう言うとニッコリと微笑んだ。

●桃色の国枝(p.30)

 気の弱い浜中は、いつも国枝桃子に近づかないようにしている。国枝助手は学生からは恐れられていた。

「そうだね。国枝君は男子生徒を喰いまくるからね」
「さ、犀川先生。誰のことを言ってるんですかっ??」

●好き嫌い(p.38)

犀川には、この世でどうしても食べられないものが三つある。西瓜とあんこと黄粉であった。

「イギリスの料理でもゲテ物でも食べられるのになぁ」
「先生は、好き嫌い無く、どんな女性でも喰ってらっしゃるのに……」
「ソレとコレとは関係ないよ、西之園君」
 犀川は微笑んだ。

●もしも国枝助教授が……(p.40)

 国枝は、部屋から出ていった。彼女は挨拶をほとんどしない。挨拶は無駄だと考えているようだ。

 ──と、国枝が戻ってきた。
「いや〜、困ったこっちゃ。忘れもんしてしまいましたわ。えろう時間を無駄につこうてしもうて……。あぁ、アホやアホや」
 そう独り言を呟きながら用を済ますと、国枝は再び部屋から出ていった。

 ……挨拶は……してないな。

●私、脱いでもすごいんです(p.42)

「暑いな」犀川は車を出て呟いた。「まったく、暑い……」
「暑いとおっしゃったところで、涼しくなるわけではありません」国枝が犀川に近づいてきて言った。

 彼女は大きな麦わら帽子をかぶっていて、Tシャツに膝まである半ズボンだった。遠くから見たら男に見えるし、近づいても、たぶん女には見えない。

「……何をしてらっしゃるのですか?」
「いや、Tシャツを脱がせたら、女に見えるかと思ってね」
 脱がそうと奮闘していた犀川は、真面目に答えた。
「下もすべて脱がさないと、おそらくダメでしょう」
 まったく、国枝の指摘はいつも正鵠を射ている。

●やっぱり攻めるのが似合う(p.42)

 国枝は、二年ほど前に、勤めていた研究所を辞めて、犀川の講座の助手になった。犀川より四つ若い二十八歳であるが、独身である。いや、彼女が結婚するなんてことは、想像を絶するシチュエーションである。

「彼女の夜の生活が想像出来ないもんね、浜中君」
「い、いや、それはそうですけど(僕にフらないで……)」
「タチなら想像出来るんだけど」
「……え、どういう意味ですか。犀川先生?」
 無邪気に問う萌絵に、犀川は黙って微笑むことで答えた。

●駄菓子屋(p.44)

「片っぽはビールよ」アイスボックスをトランクから取り出した川端と渕田に萌絵が言った。「こっちはアイスクリーム」
「アイスクリーム?」渕田は叫んだ。学生の間にまた大きな溜息が洩れる。

「へぇ、"かちわり"はあるんだろうね?」
 犀川は喜んでいる。ボックスを開けて、なにやら物色していた国枝は「"ガリガリ君"ならありました」と報告した。

●ウィンク(p.45)

「ああ、そう。喜んでいるのは僕にもわかりますけどね……」犀川は諏訪野に片目を瞑ってみせた。

(両目瞑っちゃってますよ)
 と言う言葉を、賢明にも呑み込み、諏訪野は一礼した。

●ヒ傘(p.45)

「西之園君は……」犀川は自動販売機でジュースを買っている萌絵を指さした。「あの火傘の彼女です。すみません、ご迷惑ではありませんでしたか?」

「いえ……。火だるまで歩かれると、木々に燃え移りはしないかと心配ではありますが」山根は首を振る。
「本当にすみません。彼女、漢字に弱いもので」

 日傘と火傘。しかし、そんな問題だろうか?