「千鶴さん、俺の師匠になって下さい」

 俺は思いきって言ってみた。
 千鶴さんは黙っている。
 教えるんじゃなくて、一緒に撃ちたいです。彼女は拗ねたような目でそう言っていた。
 ダメだよ、石破ラブラブ天驚拳は楓ちゃんや初音ちゃんと撃ちたいんだ。俺はそう目で答えた。アイコンタクトが通じ、千鶴さんは真っ青になった。
「ひ、ひどいです」
「何がひどいんだ」
 俺と千鶴さん以外のヤツの声が聞こえてきた。もちろん梓の声だった。
「あのな、起きてるんなら早く来いよ。千鶴姉も起こしに来といて何やってんだ」
 溜息をつく梓。
 あれ、おかしいな。こいつがこんなに大人しい物言いするなんて。
 と、ふと千鶴さんの方の様子を伺う。その瞬間パッと千鶴さんの表情が変わった、ような気がした。ああなるほど、ああやって妹を押さえつけているんだな独裁者め、と俺は思った。解ってはいるが、つくづく千鶴さんって怖い人だなぁ、と頷いてしまう。
 とりあえず飯にした。
 作ったのは梓だと言うので安心して食べた。とても美味しかったので、そう良いながらモリモリと食べた。
「良かったね、梓お姉ちゃん!」
 初音ちゃんが天使の微笑みを浮かべた。
「耕一に誉められても一銭の得にもならないけどねぇ」
「何だその言いぐさは」
 俺と梓が口論を始めていたその横で、千鶴さんは小さくなっていた。ウムウム、これくらい小さくなってくれれば邪魔にもならない。別にふんぞりかえっていても良い。「私も作ります!」と言い出さなければ。

 と、突然千鶴さんが弾かれたように顔をあげた。
「実は私も朝御飯を作ったのですけど」
 梓と初音ちゃんが一瞬のうちに固まった。
 いつも実験台となっている二人にとって、その宣言は死刑宣告も同じだったのだろう。何だか可哀想になった(もちろん二人が)。

1・「おお、それは食べてみなければ」
2・「もうお腹いっぱいなので遠慮しておきます」