「千鶴さん、俺を弟子にしてくれませんか」

「ちょー」
 その瞬間、俺の頭蓋骨が歪んだ。
 おいおい、デシッとしろなんて言ってないだろう、と俺は突っ込んだ。
 これでは解らないだろうから説明しておくと、この擬音「デシッ」とは千鶴さんの空手チョップが俺の脳天に決まった音を表現している。
 割れた頭から脳みそをはみ出させながら、俺は父を呪った。いっそのことこの女性も一緒に天に連れていってくれれば良かったのに。やっぱり、やっぱり親父は俺のことなんて要らなかったんだね。

 しかし『今日から俺は!!』ネタを知っているなんて。
 やはり、千鶴さんは師匠と呼ぶに相応しい女性だった。
 その女性に殺られたのなら本望だ。

 まだデシデシやり続けている千鶴さんの手。
 それはシベリアに吹き荒ぶ吹雪のように優しく、砂漠を焦がす灼熱の太陽のように暖かだった。

(完)