ガバッ!
 俺は勢いよく布団から上半身を跳ね起こした。
 ごっつんこ。
 そんなほんわかした擬音が部屋に鳴り響く。
 目の前に俺の布団の上に突っ伏して、頭からドクドクと血を流している千鶴さんの姿が見えた。ヨロヨロと身を起こす。
「……も、もう、驚かさないでください、耕一さん」
 目の前の女性は自分の胸もとに手を当てて、深く息を吐いた。
「まだ心蔵が、どきどきしてます」
「丈夫な貧乳だな」
 とは言えない。
 口にしたが最後、瞬殺されるからだ。
「だ、大丈夫ですか、血ぃ出てますよ」
「ごめんなさい。耕一さんこそたんこぶが」
 そっとこぶを手で押さえてくれる。
 柔らかな手が、優しくこぶを覆った。千鶴さんの目は慈愛に満ちていた。
 でも、こぶに触れられれば痛いものは痛い。
 ちくしょう、この偽善者め!
「だ、だ、だ、大丈夫ですんで、触らないで」
「あ、ご、ごめんなさい」
 しょんぼりと肩を落とす千鶴さん。
 くそぉ、謝るときも偽善面をするとは、じゃなくて可愛いなんて、何て汚い女性(ひと)だッ!
 俺は憤慨した。
「許してくれますか?」
「俺の朝の生理現象を何とかしてくれたら許します」
 と言いたかったけど我慢して、
「当たり前じゃないですか」
 と微笑んだ。
 千鶴さんと長く接しているとこういう演技がとっても上手くなるなぁ。俺はこの従姉を師と仰ぎたくなった。

1・「千鶴さん、俺を弟子にしてくれませんか」
2・「千鶴さん、俺の師匠になってください」