「あかり〜〜〜〜!!!」
……と、神岸あかりの前に、ドタバタと走ってきたのは……。
「ど、どうしたの、浩之ちゃん」
「どうしたもこうしたもあるか!?」
そう叫んで、あかりが座っている座席の机の上に、ある雑誌を置いた。若者の間で、意外な人気を誇っている、「CoolCat press」と言う名の隔週刊誌である。
今日が発売日だ。
「あっ……」
あかりの頬が、瞬時にして紅色に染まった。何故なら、その表紙を飾っていたのが、あかり本人だったからである。しかも、その衣装というかポーズというか、格好というのが……。
「浩之ちゃん……恥ずかしいよぉ、こんなの〜」
「そ、そりゃ恥ずかしいだろうよっ。こんな格好のあかりが、全国の書店に平積みにされてんだ。何万って男が、この写真を見てるんだからな!」
写真の中で、あかりはソファに座り、内股をピッタリとくっつけながらいわゆる体育座りをしている。そして、膝というか太股の上に置いたクマのぬいぐるみを胸に抱いているのだ。
可愛らしいポーズである。
……服さえ着ていれば……。
赤くなって俯くあかりを前にして、浩之は語を続ける。
「そ、それで……、コレ、着てるのか?」
「きっ、着てるよっ。何言ってんだよ〜」
「だ、だってなぁ。自分で見ても解るだろ。この写真、あかりの肌しか写ってないじゃないか。し、下着のかけらも見えねぇぞ」
「大丈夫だよ。見えてないし……」
しかし……。
「分かってないぞ、あかり。確かに見えてはいない、見えてはいないが……これほどソソル写真はないんだぞ!」
握り拳で力説する浩之。
「えっ、えっ?」
「これなら、まだ水着写真の方がマシだぁ! もう……もうヌードと同じだぁ」
──おいおい、聞いたか?
──ああ、神岸さんのヌード写真だってよ
──おい、誰か買いに行けよ。みんなで見てみようぜ
──いやぁ、清純系なのに、前から結構露出度高かったからな〜
──ううっ、一緒のクラスで良かったぜっ
ヒソヒソと話し始めるクラスの男子たち。その声が聴こえてきて、あかりは更に恥ずかしくなった。
全く……浩之が大声でわめき立てるからである。
その浩之は、まだあかりの目の前で頭を抱えて、苦悩の呻きをあげ続けていた。
(はっ、恥ずかしいよぉ……)
もう、アナがあったら入りたい気持ちのあかりであった。
「うあぁ、あかりを見て、欲情しているオッサンやガキがいるんだぁ。そして、やつらは頭の中であかりを……!? うぉぉ!! なんてこったぁ〜〜!!!」
──この日から一週間、涙を浮かべて見悶えする藤田浩之が観測され続けた。
別のクラスでは、同じ現象を起こす「ヤジマ」が観測されたらしいが、それはまた別の物語である。