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54番・苫米地鉄人は絶体絶命の窮地に立たされていた。 囲まれていたのだ。 彼らは言う。 「仲間になれ」 と。 しかし、苫米地はそれだけは出来なかった。 「断る」 と、拒絶の感情を相手に叩きつけた。 「ヘイ、何を怒ってるんだい、プリティボーイ。あまり怒っちゃダメだよ。ママがよく言ってたよ。『怒りは何も生み出さない。彼の――つまりアナタのパパの家族はね、私たちの婚約を聞いて怒り狂っていた。そして自殺してしまったの、彼の奥さん』って」 HAHAHA いっせいに周囲から笑いがこだまする。 「でもロペス。まだまだベチの怒りはとけていないようだよ」 「オーケー、エディ。ここはミーがもっといかしたアメリカンジョークで彼の警戒心をといてあげまース」 「ヘイ、ロペス! 織田信長が本能寺で焼き殺されたとき何て言ったか知ってるかい?」 「ふふふ、それはね――」 ビシッと人差し指を立て、ポーズを決めながらロペスは口を開いた。 「『熱い』って言ったのさ」 「ぎゃふん」 HAHAHAHAHA!! 「お、お、おなかがいたいー」 「ろぺーす、ゆーあーぐれいと!」 苫米地は真っ白に燃え尽き、外国人六人組に拉致されたのであった。 ・ ・ ・ 診療所があった。 誰もいないことを確認し、彼らは侵入する。 「おー、ここは病院だネ」 医療用具が雑多に並べられている棚を見ながら一人が言う。 「うちのワイフは病院が好きでネ。特に若いドクターに注射してもらうのが大好きサ」 HAHAHAHA 笑い声が弾けた。 診療所には白いシーツに包まれたシングルサイズのベッドが二つ並べて置かれていた。 「男がベッドから離れる理由の5%は水を飲むため、7%はトイレに行くため、83%は家に帰るためなんだってサ!」 HAHAHA 大げさなリアクションで皆が膝を打った。 気絶したふりをしながら、苫米地は「なんなんだよコイツラ」と戦慄を覚えていた。さすがに助っ人外国人と呼ばれる人間たち。一筋縄では理解できない。 今の状態では逃げることも出来ない。 このまま気絶したふりをしてやつらの油断を―― 「ヘイ、ベチ。起きてるのは分かってるヨ」 苫米地は、ぎくり、と身体を震わせる。 「フフフ、わたしを甘く見てもらっては困りマース」 ロペスは指を一本たて、ちっちっち、と振幅運動させた。 苫米地は跳ね起きて、窓を背にする。たてつけはそれほど強固ではなさそうだ、と彼は判断した。ここは一階。いざとなったら多少の怪我は覚悟して飛び出して逃げる考えだった。 「フッ、プリティボーイに手荒なマネはしたくありませんでしたが、そのように敵意剥き出しでは仕方ありませんね」 突如、ロペスの雰囲気が変わった。 凄まじいプレッシャー! 苫米地は戦慄した。これが、打点王を2回とり、適時打とゲッツーの鬼と呼ばれた男の闘気。指一本たりとて動かすことが出来ない。 あまりにもレベルが違いすぎる。 苫米地の身体が恐怖に震えた。 「はーい、ロペス、浮かない顔をして。マリアとうまくいってないのかイ」 突然ディアスの声が飛んだ。 「そんなことないヨ。うまくやってるサ! その証拠に、彼女はボクに一千万ドルの生命保険をかけてくれたよ」 「ぎゃふん」 hahahahahahhahahaha!! 「ひー、く、くるしかー!」 「か、かんにんしたってやにーちゃん」 苫米地は、今度こそ本当に意識を失い、しばらく目覚めることはなかったという。 【残り58人】 |