バトル・ロワイアル

CARP_05話


 そこは広い墓場。

「こら、それを渡せ!」
「イヤです!」
「先輩の言うことが聞けんのかぁ!」
「もみ上げを切った先輩にこれを持つ資格はありません!」

 19番・長谷川昌幸と26番・廣瀬純は、廣瀬に支給された武器・ワルサーP38をめぐって激しい争奪戦を繰り広げていた。

「どうあっても渡せんと言うのだな」
「当たり前です。この武器は僕こそが持つにふさわしい銃です」
「俺のほうがほっそりしていて足も長いぞ」
「いえ、やはり重要なのはもみあげです」

 二人はにらみ合う。
 どのくらいの時間が経った頃だろうか、長谷川は「仕方がない」とばかりにスッと目を細め、懐に手を入れた。

「……や、やる気ですか」
「これ以上議論を重ねても平行線をたどるだけだ。今こそ決断の時」

 そして長谷川が抜き放った武器を見て、廣瀬は驚愕した。

「そ、それは……!」
「そう、コルトパイソンだよ」長谷川が誇らしげに笑う。
「そんなの支給されたんなら、ワルサーP38をそんなに欲しがらなくても」
「ふん、お前がそれを持っていることが腹立たしいだけだ――いくぞ!」

 ついに戦いの火蓋は切って落とされた。
 激しい銃撃戦。
 それは、実弾。
 一発命中すれば命さえ簡単に奪うであろう、殺人の道具。
 それを、二人はお互いに対して使用していた。

 狂気。

 二人は、そんな言葉にとりつかれているのだろうか?
 武器の使用は悲しみを生み出す。
 それは、解っていたことだと言うのに……。

 この場での唯一の救いは、二人が発射した弾が一つたりとも目標を捉えていなかったことだ。と言うよりも、二人とも明後日の方向へ発射していた。つまり、下手だった。

「ふはははは、お前は所詮アマチュアの世界一! 俺はプロの世界一だぁ!」

 ずきゅーん。

「くそぉ、今はこれが精一杯かぁー」

 どきゅーん。

「ぐはは、廣瀬、お前はもう死んでいる」

「それはキャラが違います!」

 ズガガガガガガ。

 銘器を持っていてもそれを扱う腕がなければ役には立たない、その教訓の一例として後世に名を残す二人の不毛な戦いは、延々と続いた。


【残り61人】



【予備知識】

ワルサーP38:ルパン3世愛用の銃
コルトパイソン:冴羽遼(シティハンター)愛用の銃

ちなみに冴羽遼役の声優・神谷明はケンシロウ(北斗の拳)の声もあてている。