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「ビックリした、建か」 山の麓に一軒だけぽつんと建っていた民家の中に忍び込んだ佐々岡が、胸をなでおろしていた。先に誰かが侵入し、待ち構えているかもしれないと緊張しながら入ったのだ。 そこには確かに人がいた。 しかし問題はなかった。 なぜならそれは、確実にこの「ゲーム」に乗らない人間だと佐々岡が知っていた人物――高橋建だったからだ。 「そっちこそビックリさせないで下さいよ佐々岡さん」 「わるいわるい。誰がいるかわかんないからなぁ」 信頼できる人間に会ったためか、佐々岡の緊張は解けていた。 高橋建も同じように、胸をなでおろすしぐさを見せていた。 「まったく、どうなってんだろうなぁ」 「まさかこういうことになるとは思いませんでしたね」 高橋建はにっこりと微笑んだ。 「さて、これからどうするか」 「野村さん、緒方さんあたりと合流出来れば良いですよね」 その通りだ、と佐々岡は思った。彼らと力を合わせれば、このゲームから抜け出すことが出来るかもしれない。力を合わせれば俺たちは何だって出来る。1991年の優勝を思い浮かべながら、佐々岡は強くそう思った。 「そうだ、建、お前は一人なのか? 河野とか嶋とか、他にもお前と合流したがってた奴いたぞ」 「ああ、その二人と、あと佐竹とは合流してますよ佐々岡さん。まだその三人だけですけど」 「で?」 「三人とも精神的にまいってるみたいで、隣の部屋で休ませてます。やはり、若いですよね」 静かな表情を浮かべている高橋建を見て、こいつもさすがにベテランの年齢だな、成長したもんだ、と佐々岡は嬉しくなっていた。頼りになる実力者が一人増えたのだ。この状況を打破するためには、仲間が、戦力となる仲間が一人でも多く必要なのだから。 「見舞ってやるか」 寝ている奴にいたずらしてやる、と思いながら佐々岡は立ち上がり、隣の部屋へ向かった。――佐々岡は、もっと疑問を持つべきだった。気づくべきだった、「三人とも」疲れて眠り込むと言う状況の異常さに。 ドアを開ける。 ソファの上に一人、床の上に二人、毛布をすっぽりとかぶって寝ているやつらがいた。 (……ん?) 佐々岡は違和感を覚えた。 暗い部屋。 月明かりだけが内部をうすく照らしている。 ソファの上の影が動いた。 だらん。 と、何か棒のようなものが毛布からのぞいた。 ――腕だ。 力ない誰かの腕が、だらりと毛布のすそから姿を見せたのだ。 そして。 どす黒い液体のようなものが、腕を伝って、床へぽとりと落ちた。 血!? 「建、お前っ!」 振り返った佐々岡の目に映ったのは、大口径のマグナムオート・デザートイーグルを左手に構えた高橋建の姿だった。 「佐々岡さん、アナタも、存外甘い人だったんですね」 ドンっ。 低い炸裂音と共に、佐々岡の体が後ろへと弾けた。 剥き出しの顔が吹き飛んでいた。 高橋建は歩み寄り、死亡を確認する。そして服をまさぐり、支給された袋の中身も調べ上げた。 「これは、素晴らしい」 手榴弾3個、それが佐々岡の支給された武器だった。それらを確保しながら、彼は独白する。 (本当に、まさかこんなことになるとはね) 胸の中で、先ほど佐々岡へ言ったものと同じ言葉を呟く。 殺した四人の持ち物から役立つものを選別し、自らのフクロに入れた後、彼は佐々岡にも毛布をかけた。 「さっさと終わらせて帰らせて貰いますよ」 誰にともなくそう口にし、高橋建は民家を出て行った。 【残り61人】 |