|
絶海の孤島に建てられ、うち棄てられていた廃校。 史上最悪のサバイバルゲーム(誇張表現)が、今まさに開かれようとしていた。 「てな訳でじゃな、これからお前らには殺し合いをして貰うけぇ」 マシンガンを持った男たちを背景に、大下剛史はそう宣言した。ずいぶんと楽しそうな表情を浮かべながら。 元コーチが何を言ったのか理解できず、選手たちは途方にくれたような視線をお互いに交し合う。 何だって? 今何て言ったんだ? 殺し合う? キスし合う? どっちもイヤだぞこの野郎(特に後者)。 選手たちはそんな感想を次々と頭に浮かべた。中には『なんだこれ。まさかバトルロワイアルの真似事か? とうとうとち狂ったか』などと考える者もいた。 そんな中、立ち上がって抗議の叫びをあげる者がいた。 44番、福地寿樹。 「ちょっと大下さん、何を言って――」 「こら福地、私語をするんじゃない」 ぐさり。 眉間にナイフを生やした福地は、音もなく床へ崩れ落ちた。 誰よりも理解が遅く、軽率だった結果、彼は誰よりも早くゲームから脱落した。 わ、マジで死んでるよ。 選手たちの間に、さすがに緊張がはしる。 大下の理不尽さはまるで変わってはいなかった。 「ルールは至極簡単。この島の中で殺しあってもらえればええ。最後に残った一人だけが助かる、とまぁこういう仕組みじゃ」 それに加え、海からの脱出が不可能なこと、監視役のこちらには戦闘のプロが揃っていること、監視および自爆のための装置が選手たちの首に付けられていること、ここから出て行く際個人個人にカバンを渡すがその中には食料、水、島の地図、選手名簿、赤ペン、それに武器が入ってることなどが説明された。 「武器には当たり外れがあるけど、恨みっこなしな。役に立たんもんが入ってたとしても、それも運じゃて。で、何か質問はあるか?」 すっと挙手する者がいた。 02番の東出輝裕である。 「よろしいでしょうか」 「おお、東出、何じゃ、言うてみい」 「時間制限とか、時間経過による地域限定などは行われないのでしょうか?」東出が直立不動の体勢で訊ねる。 「ええ質問じゃ。とりあえずな、それはせんことにしとる」 「……されないのですか?」 「おう。あまりにゲームの進行が遅ければわからんがの」 しばしの沈黙の後、東出は頷いた。 「なるほど……ね」 何かを理解した風な面持ちで東出はつぶやき、「ありがとうございました」と一礼して座った。彼が何を考えたのか、この時点では誰もわかる者はいなかった。 緊張で張り詰めた空気の中、大下の声が響く。 「もう質問はないかの。それじゃ、名前を呼ばれた者から前に来い。袋を渡す。ゲームスタートじゃ」 そして。 すぐさま木村拓也の名前が呼ばれた。 嶋が呼ばれ、そして前田が呼ばれる。 次々と。 フクロを手渡され、外へと追いやられる。 次々と。 「角笛(ギャラルホルン)は鳴った……か」 その光景を眺めながら、誰かがそう呟いた。 【残り68人】 |