裏切り2


「先輩、先輩、先輩、せんぱい、せんぱ〜いっ!」

 後輩が叫んでいた。

「何だ、先輩の大安売りでもあるまいに」

「そんなことより、知ってますか、江藤が読売に移籍だそうですよ」

 3秒後、オレの内臓が3個爆発した。
 嘘だ、そんなことがあるもんか、江藤がよりによって読売に行くなんて、後輩、卿はオレに嘘をついている、キルヒアイスがオレをおいて先に死ぬはずがないんだ! 瞳に涙を浮かべながら、オレは後輩をなじった。

「そんな銀英伝ごっこはいいですから、信じて下さいよ。江藤は読売ですって。あ、サイトウさん、江藤が読売だって」

 同じサークルのサイトウさん(仮名)にも情報を伝えている後輩に、「喋ったな、江藤のことを姉上に喋ったな!」と言ったが、アホを見る目を向けられて、ちょっとだけ悲しかった。後輩が義眼でなかったのが唯一の救いだ。

「しかし、やっぱり阪神には来てくれなかったですねぇ」

「ま、阪神はともかく、横浜か──もしかして中日が凄いコネでも持っているのかと思っていたんだが、結局読売。あの長考は何だったんだ」

「よりによって読売ですよ、読売(心の声:阪神はともかくって何じゃ、こら、いてまうど)」

「そうなんだ、よりによって……悲しいよなぁ、後輩(心の声:箸にも棒にもかからん球団が何言っとんじゃ、ぼけ)」

 今日は世界の終わりを垣間見た。
 これと同じ哀しみが来年に起こるのかな。今度は垣間見る程度では済まないかもしれないな、と思いながら、肉じゃが弁当を食うのであった。