「そう、あれは、ある暑い夏の日だった……」
「……」
「…………」
「……先輩、遠い目をして虚空を見つめても勝手に回想シーンには入りませんよ、マンガじゃないんですから」
なんと言うツッコミ方だ、貴様にはノリのかけらもないのか、なぜ「時が見える、ララァァーーッ」くらい言えないのだ、ボケ殺しの相方殺しめ、と言ったが、その程度ならこの程度で十分です、と言い返された。
仕方がないので真面目に話すことにした。
我が主君の命によりカープに命を捧げていること、姉を皇帝から取り戻すためだということ、飛行機を飛ばすためには凄まじいばかりの空気の抵抗が必要なのだということ、カレー事件なのにハヤシ容疑者とはコレ如何にと言うこと、チェリーボーイは憂鬱だということ、初めての時は緊張したこと等、全てを話した。
それを静かに聞いていた後輩は、全てを察してただ一言こう言った。
「煙に巻きたいんですね」
「ああ」
オレは微笑んだ。
まだ話す時期ではない、お前がもう少し成長し、世の中の闇の部分を受け止められるようになったとき、その時に……全てを話そう。と、RPGに出てくる長老様のようなことを後輩に言いながら、昔オレが読売に洗脳されそうになったこと、オヤジの熱き鉄拳で目醒めたことなど、ちょっぴり恥ずかしいことを言わずにすんだコトを喜んだ。
(おわり)