Bungaku
文楽ト云フ事

第2回 高見広春『BATTLE ROYALE』(太田出版)

■作品紹介:

●西暦1997年、東洋の全体主義国家、大東亜共和国。この国では毎年、全国の中学3年生を対象に任意の50クラスを選び、国防上必要な戦闘シミュレーションと称する殺人ゲーム、"プログラム"を行っていた。ゲームはクラスごとに実施、生徒達は与えられた武器で互いに殺し合い、最後に残った一人だけは家に帰ることができる。
●香川県城岩町立城岩中学校3年B組の七原秋也ら生徒42人は、夜の内に修学旅行のバス毎政府に拉致され、高松市沖の小さな島に連行された。催眠ガスによる眠りから目覚めた秋也たちに、坂持金発と名乗る政府の役人が"プログラム"の開始を告げる。
ゲームの中に投げ込まれた少年、少女たちは、さまざまな行動をする。殺す者、殺せない者、自殺をはかる者、狂う者。仲間をつくる者、孤独になる者。信じることができない者、なお信じようとする者。愛する気持ちと不信の交錯、そして流血………。
●ギリギリの状況における少年、少女たちの絶望的な青春を描いた問答無用、凶悪無比のデッド&ポップなデス・ゲーム小説!
(『バトル・ロワイアル』裏表紙より)


 某小説新人賞の選考委員から、その内容の過激さゆえに落選させられたという問題作、らしい。宣伝工作の一貫だろうけど。それでも、やはりショックの大きい小説。そして何より、同人誌くさいと言うかパロディ入ってると言うか、人格や喋りが非常に面白い(オタク受けする、と言ったら語弊があるか?)。


■名科白集:

だけど、もう勝手なことは厳禁でーす。私語もだめだぞー。私語するやつには、先生、つらいけどナイフ投げるぞー。

そこで俺はコインを投げたんだ。表が出たら坂持と戦う。そして──
裏が出たら、このゲームに乗ると──。

ごめんなさいね。あたしもあなたを殺そうとしていたのよ。
           
いつの場合でもそうだが、善人が救われるかっていうとそうじゃない、調子のいいやつの方がうまくやっていくもんだ。でも、誰に認められなくても失敗しても、自分の良心をきちんと保っているやつっていうのは偉いよ。

別に特定の信仰はなかったのだが、この際何の神様でもよかった。感謝の祈り。ああ神様、ほんとうです! 私はあなたを愛しています!

何もかもわかった。わかりたくなかったけれど、自分にとっての愛しい洋二は幻だったのだ。でも──
 でも、それは、素敵な幻だった。

あなたを殺すのをやめそうだったから、あたしが殺したのよ。

【残り4人】

成功したファシズムってやつなのさ。こんなタチの悪いものが一体ほかにどこにある?

艦長コロンブス、あれがサンサルバドル島のようです。オーケイ、野蛮人だ。野蛮人に注意しろ。

どうしよう。こんなにもてていいのか、俺?

どうして──どうして、あたしはこのひとの優しいところが、見えなかったんだろう。そんなにも自分を愛してくれるひとの気持ちに、気づけなかったんだろう?

──オーケイ、今度は乗ってやるぜ。
こっちが勝つまで、続けてやる。


■名場面:

 ◆千草貴子と新井田和志の駆け引き。その後の杉村弘樹との別離。
 ◆矢作好美が歓喜と絶望を繰り返す場面。
 ◆相馬光子が滝口優一郎の腹に弾丸を撃ち込んだ後、唇を重ねた場面。
 ◆杉村弘樹vs桐山和雄

■登場人物紹介:

・七原秋也
 とにかくモテる。何の脈絡もなくモテてモテてモテまくる主人公。▼天才ショートストップ。▼ワイルドセブン、という二つ名を持つ男。▼結構生き延びるのが下手。

・中川典子
 秋也に一目惚れしてる。▼とりあえず役に立たないと言う典型的なヒロイン役。

・川田章吾
 ヤクザ(みたいな外見)。▼"プログラム"経験者。▼何でも出来る。護衛役か。▼カッコ良すぎる。

・桐山和雄
 殺戮マシーン。▼特殊な教育を受けているため、世の中のことをほとんど何でも知っているし、何でも出来る。▼コインを投げてゲームに乗るかどうかを決めた男。もし表が出ていたら……。

・相馬光子
 殺戮マシーン2。▼印象に残る科白が多い。▼天使のような顔をしている。▼不良グループのトップ。彼女に絡むと後日轢き逃げされる(轢き逃げるのは光子シンパの野郎)。▼鎌を投げて人間を仕留める。すごい。

・杉村弘樹
 拳法の段位を持つ。戦闘に関してはかなり強い。▼惚れた女を捜して戦場(?)をうろつき廻るバカ。──だからこそカッコイイ。

・千草貴子
 杉村弘樹の幼なじみ。学年一の美人。▼200メートル歴代2位の走力を持つ陸上部のエース。▼科白が面白すぎ。最高。

・瀬戸豊
 ずっこけキャラ。▼支給された武器はフォーク。▼おっちょこちょい過ぎるが、そこが一部に大人気。

・滝口優一郎
 オタク。▼チョイ役だが非常に印象深いものを読者に残す。▼信じる心、を持つ男。

・三村信史
 バスケ部のエースガード。一年の時に衝撃デビュー。「第三の男」と呼ばれる。▼プレイボーイ。そのため一部女子に不評。


■作品の感想:

 これはかなりキました。同級生同士で殺し合い。いや「こんな程度の内容でショック受けるヤツの気がしれない」とか言ってる人もいますが、ちっと想像力ってもんを働かせてみたらどうなんでしょうね。かけらでも想像する力があれば、これは設定だけで相当衝撃ですよ。でもまぁ、もしかしたら私も少し前までなら面白おかしく読むだけだったかもしれませんが。
 登場キャラクタが魅力的。
 主人公格の七原秋也や中川典子はイマイチですが……。一番好きなのは相馬光子かな? 千草貴子かも。前者は科白が重いし、後者は笑える。男はまぁ川田でしょ。彼がいないと何も始まらないって感じ。個人的には桐山が「坂持と戦う」方を選んだらどうなったか、に興味をそそられます。
 その坂持金発(サカモチキンパツ)先生。いや、もちろん金八先生が元ネタなわけですが、バトロワって映画化されるんですよね、この人役の俳優はビート武──あの、ジョーダンズでしたっけ、あの人にやらせたら面白かったかなぁ、なんて思ったりなんかして。ダメか。
 最後の方の展開とかは大抵の人の予想通りに進んでいくと思うのですが、その道筋を楽しめるのがこの作品の良いところでしょう。どうやってゲームを潜り抜けて行くのか、とにかく面白い小説です。

(ネタバレ反転)

 個人的な名場面。
 山本和彦と小川さくらの心中とか。
 倉元洋二に裏切られたあとの矢作好美の行動とか。洋二の行動はダメダメなんですが、好美の方は健気と言うか何というか。好感度大な思考と行動をとりましたね。「お前とならすぐやれると思ったから」って洋二の言葉は本心だったんでしょうか。まぁ最後に気付いた風だったんで救いがあります。
 あと相馬光子と滝口優一郎の触れ合いとかかな。この2人、最後は光子が優一郎の腹に弾丸打ち込んだことがトドメになったわけですが、これってやっぱり「楽にしてあげたかった」ってことなんでしょうね。こういう状況でなく出会っていたら、どうなっていたんだろう? ──まぁ、どうにもなってなかったんでしょうけど、もしかしたら、と思わせるこのストーリィの展開の仕方、キャラクタの感情の見せ方が秀逸だと思います。

 桐山が投げたコイン、表が出て「坂持と戦う」方を選んでいたら、一体展開はどうなっていったのか。まぁそれだと殺戮者が少なくなって面白く無くなると言えばそうかなと思わざるを得ないな。けど、サイドストーリィとして創作する分には意欲をそそられる題材ではないかと。いや、七原はともかくとして、この桐山と川田や杉村、信史が集まったら何でも出来そう。
 うーむ、誰か書いてそうだな。ネット上で捜してみようか。

 しかしラストの「勝つまで続けてやる」っての、あんたら2人じゃすぐに終わりそうだよ?(あ、言っちゃった)

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