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私的詩的殿堂
(98/10/26更新)
個人的なお薦め本を掲載。面白さ五つ星の、再読が多い本ばかりを集めています。

SF領域

『銀河英雄伝説』

(田中芳樹)

 架空歴史小説…というジャンルがあるとするなら、まさにこの作品はその最高傑作でしょう。

 この小説の素晴らしさは、『最高の英君が支配する専制国家:銀河帝国』と『堕落・腐敗した政治家達が治める民主国家:自由惑星同盟』という両陣営の戦いを、見事なまでに表現しているところです。
 『悪の帝国』と『正義の民主』の戦いはそこらでよく見かけます。しかしこの作品のように最初から最後まで帝国が同盟を圧倒して終わるなど前代未聞でしょう。内容があまりに濃く詰まっているので、簡単には語り尽くせませんが…すべての人に読んで貰いたい本です。

 小野不由美さんの解説に面白い問いかけがありました。この作品を読んだ後に、「ラインハルトか? トリューニヒトか?」と問われたとき、その人はなんと答えるでしょうか? …と。私は「トリューニヒト」と答えざるを得ません。いかにトリューニヒトが不快な政治家でも、いかにラインハルトが英明、偉大な最高の君主だったとしても…。

 この作品が、読者に与えた影響というのは、計り知れないものがあると思います。小説家(になった人)の中にもそう言う人は沢山いるでしょう。人1人の人生観に影響を与えてしまう小説…そんなものが、この日本にどれだけあるでしょうか? 銀英伝は、まさに偉大な作品と言うべきでしょうね。

「民主共和政とは、人民が自由意志によって自分たちの制度と精神をおとしめる政体のことか」
(ラインハルト・フォン・ローエングラム)

「人間は主義だの思想だののためには戦わないんだよ! 主義や思想を体現した人のために戦うんだ。革命のために戦うのではなくて、革命家のために戦うんだ」

(ダスティ・アッテンボロー)

ミステリー領域

『占星術殺人事件』

(島田壮司)

私を本格推理の世界へ誘った、思い入れ深い作品。
そして、これほど本格ミステリーらしい作品にお目にかかることも滅多にないと思う。 さらにこの作品は島田壮司のデビュー作であるのだから凄い!
『御手洗シリーズ』の第1作目にあたる。

マニアックで読み手を選ぶ小説だとは解っていますが、是非みなさんにお薦めしたい本です。 最初の辺りはちょっと読みにくいのですが、すぐに本編に入ります。そこからは読みやすい文体と なるので、読み飛ばすぐらいの気持ちで取りかかりましょう。

「僕は東京のはずれの、こんな薄汚い街の一角に占い師の看板をあげて、さまざまな悲しみの声を聞いてきた。……そんな時代は今日できっぱり終わりにしよう。もうそろそろ誰かを救ってあげてもいい頃だ」
(御手洗の台詞より)
『異邦の騎士』

(島田壮司)

御手洗潔シリーズの第三長編にあたる。これは傑作である。もしかしたら 島田壮司が書いた作品の中で一番かもしれない。
大がかりなトリックも用いられているが、これは恋愛小説としての要素の方が印象に残る。 ロマンティックな気分に浸りたいなら、これを読んで下さい。外れはないと確信しています。

「これは私の、ただ一つの悲しい物語だ。もう今後二度と、こんな悲しい話を語ろうとは思わない。決して、誓って、思わない」
(文中より)
『魍魎の匣』

(京極夏彦)

京極夏彦の『京極堂シリーズ』(作者は妖怪シリーズと銘打ったとか噂を聞きますが…)の第二作。『占星術殺人事件』以来、本格、新本格と呼ばれる作家たちの一連の作品を読んできましたが、これほどショックを受ける作品に再び出会えるとは思いませんでした。
 ある意味ミステリィは食傷気味だったのですが…この本に出会えて良かったと思ってます。しかも、図書館でたまたま手に取ったのがこれだったと言うことで、嬉しさも倍増です。

「犯罪は、社会条件と環境条件と、そして通り物みたいな狂おしい瞬間の心の振幅で成立する。───はたまたまそれと出会ってしまったのさ。それだけだ」
(京極堂の台詞より)
『すべてがFになる』

(森博嗣)

 犀川&萌絵シリーズの第1作(現在10巻まで出て、とりあえず完結しました)。

 作者は某国立大学の工学部助教授。作品の雰囲気はまさに『理系』という感じで、登場人物はほぼ全員理系人間では…と思わされる。研究室の雰囲気や会話など、言って見れば工学部版『動物のお医者さん』である。
 こんな考えをしている人間ばかりいるわけが…と思う方もいるかもしれないが、理系の人はけっこうそんなところがあるのですよ。ま、全員が全員そうだと言うわけでもないし、程度の差もありますけどね。
 コンピュータ用語も何の説明もなく出てくるが、そんなに気にすることはない…でしょう。知っているに越したことは無いのですが。知らなくても面白いッス。

 この作品はショックの大きさと言う点では、私は『占星術殺人事件』や『魍魎の匣』の方が大きいと思いますが、作品の雰囲気、登場人物の個性・面白さなどを考えると、2作に負けてはいません。是非お薦めしたい小説です。

「7だけが孤独なのよ」
(真賀田博士の台詞から)

「プログラムに潜んでいるミス……、そう、バグかもしれない。神の作ったプログラムのバグこそ、人類と言える」
(文中より)