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ぼくは勉強ができない(山田詠美)、69(村上龍)、パワーオフ(井上夢人)、夏への扉(ロバート・A・ハインライン)、そして二人だけになった(森博嗣)
ぼくは勉強ができない 山田詠美 新潮文庫 400円+税

(7.5 points)

『ぼくは確かに成績が悪いよ。でも、勉強よりも素敵で大切なことがいっぱいあると思うんだ』
 17歳の時田秀美くんが活躍する青春小説──という感じです。

 いかにも狙った感じの小説。
 主人公は、勉強が出来ないけど女性にはもてて、楽しく高校生活を送っている。そして勉強だけをしている人を、それだけしか能のない生活を楽しんでない困ったちゃん的に書く。──一方的です。二極化すると、分かりやすくて面白くなります。

 勉強しろだの遊ぶのは大学に行ってからにしろだの、そう大人達にくどくど言われる現代の子供たちにとっては、「勉強より大事なことがある」というのは魅力的な文句でしょう。
 ある程度は同感なんですけど、ただ逃げてるだけのヤツもけっこーいると思う。「数学なんて何の役に立つんだ。足し引き出来るだけで良いじゃないか」「跳び箱なんてこれからの人生に何の役にたつんだ」ってのも同様でしょう。ただの愚痴で、本気で言っている人はいないと思いますが。

 読んでみて、学生生活を楽しんで下さい。

(2000/01/19)

69 sixty nine 村上龍 集英社文庫 438円+税

(9.5 points)

 1969年に著者の村上龍の周りで起こったことの一部を書いた自伝的小説。村上龍は読んでなかったのですが、コレは面白いという話を聞いたので手を出してみました。

 東京大学が入試を中止し、ビートルズやローリング・ストーンズが街を流れ、ヒッピーが愛と平和を訴えかけていた時代。「僕」が高校三年生の時、佐世保北高がバリケード封鎖された。やったのは──もちろん「僕」とその仲間たち。

 言い回しが何となく好きです。
 例えば、いつも弁当代に150円を貰っていた「僕」の思うこと。

『百五十円といえば、ラーメンを食べて、牛乳を飲んで、カレーパンとメロンパンとジャムパンが買えた。
 しかし、僕は牛乳なしのカレーパン一個で我慢をし、残った金を貯めていた。サルトル、ジュネ、セリーヌ、カミュ、バタイユ、A・フランス、大江健三郎らの本を買うためであったと言うのは嘘で、私立純和女子学園という美女率が二十パーセントを越す軟派の女高生を喫茶店やディスコでひっかけるためにぜひとも必要だったのだ。』

 とにかく面白い、思わずクスッと笑ってしまう小説です。
 固有名詞とかで知らないものも多く出てくるのですが、それでも何となく分かって、何となく面白い、というのが最高です。とにかくオススメ!

(2000/01/19)

パワー・オフ 井上夢人 集英社文庫 800円+税

(6.0 points)

 コンピュータ、ネットワーク、そして『人工生命』をキーワードにして綴られてます。

 高校の実習中、コンピュータ制御されたドリルの刃が生徒の掌を貫いた。モニタには「おきのどくさま」というメッセージが表示されていた。次々と事件を起こす新型ウィルス。それをめぐり、様々な人が動き始めた。

 人工生命(A-life)についてちょっとでも知っている人にとっては、何のひねりもない小説です。でも知らない人にとっては「何これ、SF?」って感じでしょう。
 生命とは何か、を考えさせてくれる研究ですね、A-lifeは。否定的な意見も多いですが。それを題材として書いたことについて敬意を表したいです。

 似た感じのストーリィを考えたことがあります。そう言う人って多いのでは?
 私は「コンピュータやプログラムが自分の意志を持ち出し、人類を滅ぼそうとする」ってストーリィの映画なり小説なりを見たとき、何だかなぁ……、と常々思ってます。何故すべてが敵に回るのか。何故意思統一がされているのか。奴らに内部論争はないのか。
 「科学社会への警鐘」といったご立派なお題目を身に纏った映画には飽き飽きです。せめてこの「パワー・オフ」くらいのことはやってほしいですね。

 この小説を「勝手に収束して、何だかしりきれとんぼだ」と思った人には、もう少し考えてみて下さい、としか言えません。

(1999/11/20)

夏への扉 ロバート・A・ハインライン ハヤカワ文庫 640円+税

いわゆる、タイムマシンもの、です。

あらすじとしては…
親友と恋人に騙され、会社も、開発した商品も、全てを奪われた若き発明家は虚脱する。冷凍睡眠で未来への逃避も考えるが、彼らと対決することを決意。しかし、罠にはまって強制的に冷凍睡眠させられてしまう。
そして、30年後。
過去の事件を知るにつれて出てくる違和感。真相を知るために、30年前へ戻ることを考える主人公であったが…。(以上)

タイムマシンものの傑作と言って良いのではないでしょうか?
特に目新しいものではないですが(古い作品だからねぇ)、伏線のリンクの仕方が見事です。「時空を越える」系の小説は、こうでなくては。

ゲームの「DESIRE」に通じるところもあり、私的には読んで得した一冊です。
多元世界の話もちょっと出ていてニヤリとさせられますな。剣乃ファンは読んでも良い一冊ではないかと。

(99/10/20)

そして二人だけになったUntil Death Do Us Part 森博嗣 新潮社 2000円+税

森博嗣センセの新作。小説としては初のハードカバーですね。

全長4000メートルの海峡大橋を支えるコンクリートの
巨大な塊<アンカレイジ>。
内部に造られた窓ひとつない空間に集まった
科学者・建築家・医師の六名。
プログラムの異常により海水に囲まれる完全な密室となった
この建物の中で、次々と起こる殺人……。
最後に残ったのは、盲目の若き天才科学者とアシスタントの
二人だった。
(オビより)

出入り不可能な場所で起こる殺人。残されたのは二人。
と言うことは、二人のどちらかが犯人と言うことになります。

一人称で語られるマルチサイト小説。
"僕"が犯人でないのならば、"私"が犯人。
"私"が犯人でないのならば、"僕"が犯人。
しかし……。

これは傑作かもしれません。タイトル、そしてその英文、最後まで読むとこれがまた奥の深さを感じさせると言うか何というか。
正直言って、一度読んだだけでは解りません。納得できないと言うか、どうとでも読めるというか……。読み手によって、エンディングが違うのではないでしょうか? とにかく、再読は必要でしょうね。もし、これを一度読んだだけで理解できる人がいたら、素晴らしい読解力だと思います。

( '99.7.12 )