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"夢魔の四つの扉"グインサーガ外伝14巻 栗本薫 ハヤカワ文庫 500円+税

 グインサーガを読むには根性がいると言われる。本伝が現在61巻、全100巻と予定されているし、外伝もこの最新巻で14巻目。ちょっと本を読んでみようかなって人には辛いかもしれない。だが面白い。私は中学生の頃に初めて読んだのだが、5巻買って帰った後、さらに5巻買いに行った覚えもある。その位面白いと思っていたのだが…。
 最近はその怒濤の魅力が薄れてきている。この外伝14巻もそうだったが、プロットをしっかり作らず、作者の文章的技巧だけで行き当たりばったりで書いているように思えるのである。確かにある程度は面白いし、複線も張りまくっていて、「読ませる」文章ではある。しかしただそれだけ…と言ってもいい。

 "鬼面の塔"と呼ばれる建物の中は四つの層に別れていて、そこにいる怪物をグインが倒して一層一層登っていく。敵は大蜘蛛、サイクロプス、精神を呪縛する妖精など…。まるでデキの悪いRPG小説を見せられているようだった。倒し方もグインの能力ではなく、ただアイテムを使って倒しているだけ。一層をクリアして次の階に登るときの描写もTVゲームのRPG的では、最早笑うしかありません。
 これを読んでの感想としては、「最近の栗本さん、レベルが落ちてない?」ってコトです。毎月のように新刊を出してくれるのはいいけど、内容が伴ってないのでは本末転倒ですな。

 最後に一つ。
 ファンの間で議論を読んだのは、この巻に"ク・スルフ"と言う名の物体(生物、人物?)が出現したこと。これは間違いなくなく「クトゥルー神話」にリンクしている。栗本さんは既にこれを題材にした「魔界水滸伝」を刊行中で、グイン・サーガとの関係が気になるところ。しかし、私はまたクトゥルーか…と気が滅入ってしまいますね。

  <グインのセリフより>

俺はただ一つ、この俺とは何者なのか、それを知りたいだけだ!
(98/07/14)

御手洗さんと石岡くんが行く(総指揮・島田壮司) 原書房 950円+税

 この本は『コミック・アンソロジー+書き下ろし短編』で構成されている。中にあるマンガは、いわゆる同人作家さんたちが書いたものであるが、こういう本の中に島田壮司の書き下ろし短編が入っているコトに驚かされました。

 御手洗シリーズを題材にした同人誌が送られてきて、それを読んだ島田壮司さんは感銘を受けたというか面白がったというか、妙に同人作家さん達に親切です。そういう方達の要望に応えて、短編集の中に御手洗と石岡くんの私生活などをを書き下ろしたこともありました。知らない世界だったんだろうなぁ……。

 御手洗シリーズを全部読んでいるなら、この本をお薦めしておきます。御手洗や石岡くんに対する愛情が感じられるし、大笑いできますよ。

  <『近況報告』から…>

いずれにしても、この世界はまだまだ詩人の感性を刺激する幻想的闇だらけだ
僕の頭も、当分眠らないですむ。
(98/06/06)

塗仏の宴宴の支度(京極夏彦) 講談社ノベルス 1200円+税

 京極堂シリーズ最新作。6つの章に分かれており、それぞれの章には「ぬっぺっぽう」「うわん」「ひょうすべ」「わいら」「しょうけら」「おとろし」と6つの妖怪の名前がついています。次回作『塗仏の宴 宴の始末』に続く形になっており、上下本と言えるでしょう。ただ単に「上・下」と名前を付けず、「支度・始末」としたのは京極夏彦らしいかな。

 この6つの章は単体として読んでも良い構成になっており、この短編が大作の一部として機能するようです。この中の幾つかは、すでに雑誌のメフィストに掲載されていました。
 『胡散臭い自己啓発セミナー』『胡散臭い占い師』『胡散臭い宗教』などが次々と出てくるので、ある意味面白い。このシリーズのなかの名セリフとして京極堂の「この世には、不思議なものなど一つもないのだよ」がありますが、それに対抗するかのように、この話では次のようなセリフを言う人物が出てきます。「世の中には不思議でないものなど無いのです」。

 ラストに関口ファンは衝撃を受けるでしょうが、これからの展開が楽しみでもあります。出来れば二冊いっぺんに出して貰いたかったというのは、読者の我が儘でしょうか?

  <京極堂の一言>

世の中には無駄な言葉などありませんよ。無駄と感じるなら感じる者が無知なだけです──京極堂
(98/06/06)

今はもうない(森博嗣) 講談社ノベルス 880円+税

 犀川&萌絵シリーズの8作目となる(それにしても森さんは随分と早いペースで書き上げていますね)。いや〜、この作品には騙されてしまいました。ダメだと言うことではなく、作中のトリックに完全に騙されてしまったのです。

 今回は笹川という男の一人称が基本となって構成されている。その語りの中で殺人事件が起こるのですが、その幕間に「萌絵が犀川にこの殺人事件について説明する」会話シーンが挿入される形式になってます。
 いわゆる密室殺人ですが、事件そのもののトリックに対しては、あまり驚いたりはしませんでした。別のところ…今までのこのシリーズは三人称で書かれていたのに、何故今回は笹川という男の一人称なのか…そこがポイントでした。後で考えると、何故そこに考えが及ばなかったのかとも思うけど、解らなくて良かったな〜、とも思います。

 この本はミステリーではなく、恋愛小説でした。

  <表紙から一文>

人間が世界を支配している? 誰がそんなことを言ったのだろう?
もちろん、人間以外に言わない
(98/06/06)

ライン(乃南アサ) 講談社文庫 524円+税

 この作品は乃南アサの長編第2作にあたる『パソコン通信殺人事件』に加筆修正を加え、改題して出版したものです。それなりに面白い作品ではあると思う。通信を使っている人なら、なるほどと思える場面がありますしね。

 大学受験を三浪している主人公・小田切薫はパソコン通信にはまっており、チャットの場面などが何度も出て来ます。そして彼の周りで殺人事件が起きていく。こういうネットを題材にした小説では他に栗本薫が書いた『仮面舞踏会』があるが、これと同じく殺人は『オフ』(ネット上でつき合うだけでなく、実際に会ってみること)の時点で起こる。
 まだパソコン通信というものが普及していないときに書かれたものである為か、いささかその世界に対する偏見が目に付きます。作者がそう思っていたのかどうかは解らない(私は違うような気がする)。ですが、現在でも通信の世界は暗い、オタク、人間的でない…と毛嫌いする人も多く、その人たちがこれを読むと、更にその思いを強くすると思われます。

 いわゆる「世間で間違って認識されている通信の世界」そのものですね。キーワードとしては『ネットオカマ』『女性がオフに連れ出されて暴行を受ける』『人間的でない』…よく使われます。確かにそういう側面もあり、女性に怪しいメールを出し続ける男性、刹那的な出会いを求めて通信の世界へ入ってくる人もいます。ですがそうではない側面もあると言うことも、もっと記述して欲しかった…と思いました。

 事件の真相については、作品の途中で大体読めてしまいました。通信世界の特殊性を考えていれば、驚かされる場所はないと思います。この作品は青春小説かな。

(98/06/06)